ミッドナイト・スクール

「あーっ、まだ出ないのか! この非常時に警察は何をしてるんだ」
なかなか応答がない為に、後藤は苛つき始めた。
……ガチャリ!
「あっ、繋がったんじゃない?」
「もしもし、そちら警察?」
『はい、どうなさいましたか?』
ようやく受話器から反応があった。
「もしもし、大変なんです。人が殺されてるんです」
「……はい。知ってます」
「え?」
 意味が分からず、後藤と悠子は顔を見合わす。
「あの、もしもし、殺人事件なんですが……」
気を取り直した後藤が、再び受話器に向かって喋る。
『はい分かっております』
再び受話器から返事が返って米る。
「わかってるって、こっちはまだ何も言ってないんですけど?」
「ねえゴッチー、何かおかしいよ」
突然、隣の悠子が声をかけた。
「どうしてだ?」
後藤が尋ねる。
「だって、普通は『110番です』とか、『警察です』とかって何か言う筈でしょ」
「そういえば……そうだな」
さすがに後藤もおかしいと思ったのか、確認を取るように尋ねる。
「もしもし、そちら警察? 110番かけてるんだけど」
一瞬の沈黙の後、電話から返事が帰ってきた。
『ハィ、コチラケイサツ、ヒャクトウパンデス。ハイコチラケイサツヒャクトウパンデス。ハイコチラケイサツヒャクトウパンデスハイコチラ……』
受話器から聞こえる声は、妙な機械音で喋り出した。
「な、なんだこれは!」
落としそうになった受話器を抱えるようにして、後藤が怒鳴る。
「もしもし、もしもし!」
『ハイ、モシモシ、タダイマソチラニムカッテオリマス。イマシパラクオマチクダサイ』
「何、おい!」
ブッツ。
 ツー、ツー、ツー。
後藤は切れた電話を見つめたまま、呆然としていた。
「こっちへ向かってるって……一体?」
隣で聞いていた悠子も、同様に驚きを隠せない。
「分からない。一体、何がどうなってるんだ!」
後藤は頭を抱え、机に突っ伏す。
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