ミッドナイト・スクール
胸に沸き上がる、何か黒い感情が魅奈を不安にさせる。
「大丈夫。絶対に無事に脱出できるさ」
励まそうと、信二は優しく、それでいてカ強く魅奈の手を提った。
……今、彼女を守ってやれるのは自分しかいない。信二の心の中では逃げ出したいという気持ちと、魅奈を守るという使命感が戦っていた。
……注意深く廊下を歩く二人は、やがて1Fのトイレの前に着いた。トイレは各階に一カ所ずつ、南側階段の近くに設置されている。
トイレ。昼間何げなく利用している場所が、夜こんなにも恐ろしく思える場所が他にあるだろうか?
学校の怪談というものにおいて、トイレにまつわる話は定番のものとなっている。七不思議というものは、各学校によって内容がまるで違う。しかしそんな怪談に唯一共通点があるとすれば、それはトイレという場所を舞台にした話が、必ずと言っていい程あるという事だ。夜のトイレ、この場所こそ学校内で最も恐ろしい場所かも知れない。
「じゃあ終わったらここで待ってるから」
そう言うと、信二は男用のドアを軽く押した。
「ま、待って下さい。一人にするんですか」
慌てて背中を引っ張る魅奈。
「だって、トイレの中までついて行く訳にはいかないでしょ」
「そうだけど……」
「それとも、中に一緒に入るとでも言うの?」
「だ、だめっ、それは絶対だめ」
暗闇の中でも分かる程、顔を真っ赤にして魅奈が俯く。
「大丈夫、何かあったら直ぐに助けに行くから」
信二に説得され、渋々と魅奈は女子トイレに入った。
用心の為、トイレの電気はつけない。ここは一階のトイレなので外のガラスは曇りガラスになっている。だから外の様子は分からないし、外からも中の様子は分からないはずだ。
トイレについての怪談は、女子トイレについてが一番多い。何と言っても『花子さん』のせいだろう。九年以上にもわたる学校生活において、この話を聞いた事の無い者は恐らくいまい。
「やだなあ、花子さんとか出ないだろうな」
『花子さんは二階だか、三階だかのトイレの、奥から二番目の個室にいる』というような話を昔聞いた気のする魅奈は、ここが一階のトイレにもかかわらず、意識的に奥の方を避け、一番手前の個室を使用した。
「大丈夫。絶対に無事に脱出できるさ」
励まそうと、信二は優しく、それでいてカ強く魅奈の手を提った。
……今、彼女を守ってやれるのは自分しかいない。信二の心の中では逃げ出したいという気持ちと、魅奈を守るという使命感が戦っていた。
……注意深く廊下を歩く二人は、やがて1Fのトイレの前に着いた。トイレは各階に一カ所ずつ、南側階段の近くに設置されている。
トイレ。昼間何げなく利用している場所が、夜こんなにも恐ろしく思える場所が他にあるだろうか?
学校の怪談というものにおいて、トイレにまつわる話は定番のものとなっている。七不思議というものは、各学校によって内容がまるで違う。しかしそんな怪談に唯一共通点があるとすれば、それはトイレという場所を舞台にした話が、必ずと言っていい程あるという事だ。夜のトイレ、この場所こそ学校内で最も恐ろしい場所かも知れない。
「じゃあ終わったらここで待ってるから」
そう言うと、信二は男用のドアを軽く押した。
「ま、待って下さい。一人にするんですか」
慌てて背中を引っ張る魅奈。
「だって、トイレの中までついて行く訳にはいかないでしょ」
「そうだけど……」
「それとも、中に一緒に入るとでも言うの?」
「だ、だめっ、それは絶対だめ」
暗闇の中でも分かる程、顔を真っ赤にして魅奈が俯く。
「大丈夫、何かあったら直ぐに助けに行くから」
信二に説得され、渋々と魅奈は女子トイレに入った。
用心の為、トイレの電気はつけない。ここは一階のトイレなので外のガラスは曇りガラスになっている。だから外の様子は分からないし、外からも中の様子は分からないはずだ。
トイレについての怪談は、女子トイレについてが一番多い。何と言っても『花子さん』のせいだろう。九年以上にもわたる学校生活において、この話を聞いた事の無い者は恐らくいまい。
「やだなあ、花子さんとか出ないだろうな」
『花子さんは二階だか、三階だかのトイレの、奥から二番目の個室にいる』というような話を昔聞いた気のする魅奈は、ここが一階のトイレにもかかわらず、意識的に奥の方を避け、一番手前の個室を使用した。