ミッドナイト・スクール
……結局、トイレでは特におかしな事は起こらないですんだ。
「ほらね、何も怖い事は無いんだよ。怪物だって、もしかしたら何者かの変装かも知れないし、新種の動物が動物園の檻から逃げ出したとか、そういう事かも知れないしさ」
「そうですね」
この近くに動物園はないが、信二も魅奈も物事を明るい方向へと考える事にした。ただ、それでも命にかかわる事なので、慎重に行動するという事は再確認の上だ。
……だが、そんな甘い考えはまったく無意味である。という事を二人は思い知る事になる。
地理室の前まで戻ると、中からうっすらと青い光が窺えた。
「あっ明かりだ、誰か戻って来たのかな?」
信二はドアに手を掛けた。
「誰かペンライトでも持っていたんですかね」
魅奈は後ろから信二の行動を見守る。
……ガチャリ。
ドアの向こうに信二が見たものは、この世のものとは思えない、とても神秘的なものだった。
室内の中央よりやや奥の所に誰かがいた。その誰かとは人間なのだろうか? 青い光に全身を包まれている姿は、神秘的と形容する以外に表現方法が見当たらない。後ろ姿だと分かるのは、身につけているローブの様な姿からだ。
目を奪われて、呆然と突っ立ったままの信二の方へ、やがてその人物は振り返った。
「き、君は……」
振り返ったローブ姿の何者かは、フードの中から青白い眼光を発していた。……女だ!フードで顔は隠れて見えないものの、信二は正体が女である事を確信した。なぜそう思ったのかは分からない。ただなんとなく、敢えて言うなら、フードから伸びる細い腕、そし
て微かに見える顎のラインから女と直感したのだ。
女は信二の方を見たままじっとしている。
「先輩、どうしたんですか!」
信二の後ろから魅奈が声をかけるが、信二の耳には届いていなかった。
『コロス、コロス、コロス……』
信二の頭の中に、テレパシーの様に女の思念が伝わって来る。
「あ、ああ……あああ」
突然、金縛りにでもあったかのように、信二は身動きが取れなくなった。それと同時に舌も麻痩して喋れなくなった。
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