ミッドナイト・スクール
信二達は一階の管理棟への連絡通路で、別の足音を聞きつけた。
「誰か……いる」
和哉は前方に目を凝らし、暗閣の中から現れる人影に神経を集中した。
カツ……カツ……カツ。
廊下を歩く足取りがやけに重たい。
「……ご、ゴッチー!」
前方から現れたのは、悠子を背負った後藤だった。
「か、和裁か! よかった。悠子が大変なんだ」
後藤はその場に悠子を下ろすと座り込み、説明を始めた。
「悠子、悠子!」
肩を掴んで揺さぶるユリだったが、悠子は虚ろな目をしたまま焦点が合わない。
「……死ぬ、私、死ぬ……首が」
か細く出る声は『死ぬ』という言葉を繰り返し続けている。
パフン! パフンッ!
悠子の頬に、ユリの手袋ビンタが飛ぶ。
「しっかりしなさい悠子! 死ぬなんて簡単に口にしちゃだめ、生きる気力がなくちゃ生き残れないよ!」
後藤にも叩かれていた悠子の頬は真っ赤だったが、痛みを感じるどころの問題ではない。
「……私は……死なない? 死なないの?」
幼い子供のような純粋な瞳で、悠子がユリに尋ねる。
「大丈夫、死ぬもんですか……ぜッタいニ……死ぬ! 死ヌ! シヌ! シネエエエ!」
ユリの高い透き通る声は、途中から回転数を落としたテープ音声のように低くおぞましい声に変わっていく。
目の前のユリの顔がどんどん萎み、まるでミイラのようになっていく!
「い、いやああ!」
暴れる悠子にユリが手を伸ばす。
「ど、どうしたの悠子、落ち着いて!」
「いやあ、助けて!」
「大丈夫か」
後藤がユリに声をかける。
「一体どうしたのかしら、急に怯え出したわ」
ユリが悠子を揺さぶる。
「ねえ悠子、大丈夫、悠子!」
悠子の目に移った、ミイラとなったユリが言う。
「オ前ハ死ヌ、死ヌノダ、首ヲ飛パサレテ死ヌノダ」
目の前のミイラが自分に死を告げる。
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