ミッドナイト・スクール
「だけど兄さん……」
「もう言うな。後の事はあいつらにまかせて、俺達は家に帰るんだ」
文彦の言葉を遮り、種田は強引に会話を終わらせた。
……地理室を出た後、ぐるりとグラウンド沿いに歩いた二人は、やがて遅刻坂に辿り着いていた。
「あれ、何か変じゃない?」
突然、文彦は前方を見て声を出した。
「ん? 別におかしな所はないじゃないか」
何事もない様に種田は正門に近づき、その後、やっと文彦の言う意味が分かった」
……無いのだ。
正門から外の世界が無いのだ。
正門の外は真っ暗で景色はおろか、地面さえも見えない。ただ広がる広大な闇。
「一体どうなってんだ?」
正門に触れた種田は、外の景色を見つめ愕然とした。
いつもなら、予備校の看板と駐車場が目に入るのだが、その見慣れた景色が無い。暗いからといっても今日は満月、目の前が見えない筈はない。
……その時 !
「わっ、何だ!」
「兄さん!」
突然、正門の外の闇の中から無数の手が伸びて来て、種田を掴み、闇の中へ引きずり込もうとした。
「何だ、た、助けろ文彦!」
一本、また一本と手は増えて、種田を自分たちの方へ引きずり込もうとする。
「くっ、う、ええい!」
ドタッ!
懸命に手を引き剥がすと、二人は後ろに尻餅を着いた。
無数の手はしばらく残念そうに空中をうねり、やがて闇の中へと消えて行った。
「はあはあはあ、なっ、何だったんだ今のは?」
荒い呼吸をしながら、種田は文彦に問う。
「はふはあ、わから……ない。はあはあ。でも何か良くない気配を感じたよ。捕まってたら今頃どうなってたか……」
息も落ち着くと、二人は他の出口もあたってみたが、全てここと同じ闇が広がっており、とても外へ出られるとは思えなかった。
「どうしよう兄さん?」
「一か八か出てみるか、意外にすんなり帰れるかも知れないぞ」
「やめた方がいいよ、命は大事にしなくちゃ」
兄の提案を止める文彦だったが、種田は納得がいかないようだった。
「もう言うな。後の事はあいつらにまかせて、俺達は家に帰るんだ」
文彦の言葉を遮り、種田は強引に会話を終わらせた。
……地理室を出た後、ぐるりとグラウンド沿いに歩いた二人は、やがて遅刻坂に辿り着いていた。
「あれ、何か変じゃない?」
突然、文彦は前方を見て声を出した。
「ん? 別におかしな所はないじゃないか」
何事もない様に種田は正門に近づき、その後、やっと文彦の言う意味が分かった」
……無いのだ。
正門から外の世界が無いのだ。
正門の外は真っ暗で景色はおろか、地面さえも見えない。ただ広がる広大な闇。
「一体どうなってんだ?」
正門に触れた種田は、外の景色を見つめ愕然とした。
いつもなら、予備校の看板と駐車場が目に入るのだが、その見慣れた景色が無い。暗いからといっても今日は満月、目の前が見えない筈はない。
……その時 !
「わっ、何だ!」
「兄さん!」
突然、正門の外の闇の中から無数の手が伸びて来て、種田を掴み、闇の中へ引きずり込もうとした。
「何だ、た、助けろ文彦!」
一本、また一本と手は増えて、種田を自分たちの方へ引きずり込もうとする。
「くっ、う、ええい!」
ドタッ!
懸命に手を引き剥がすと、二人は後ろに尻餅を着いた。
無数の手はしばらく残念そうに空中をうねり、やがて闇の中へと消えて行った。
「はあはあはあ、なっ、何だったんだ今のは?」
荒い呼吸をしながら、種田は文彦に問う。
「はふはあ、わから……ない。はあはあ。でも何か良くない気配を感じたよ。捕まってたら今頃どうなってたか……」
息も落ち着くと、二人は他の出口もあたってみたが、全てここと同じ闇が広がっており、とても外へ出られるとは思えなかった。
「どうしよう兄さん?」
「一か八か出てみるか、意外にすんなり帰れるかも知れないぞ」
「やめた方がいいよ、命は大事にしなくちゃ」
兄の提案を止める文彦だったが、種田は納得がいかないようだった。