ミッドナイト・スクール

……結局、二人はまた正門前に戻って来た。校舎の周りを一周して再び戻って来た二人は、そこでとんでもないものを見た。
「だ、誰か！　助けてくれえええ！」
正門の所で誰かが助けを呼んでいる。
「あっ、大変だ、あの手に捕まっちゃったんだ」
文彦は駆け寄ろうとするが、種田はそれを引き留めた。
「だめだ、もう間に合わない」
「うわーっ！」
捕まっているのはサッカー部の生徒のようだ。サッカー部のジャージを来た彼は、無数の手に捕まれ、空中に持ち上げられていた。
「たっ、助けて、助けてくれ！」
恐怖におののき、懸命に助けを呼ぶ彼の身体は正門の上を通過して外に出た。
「あ、あああああ！」
無数の手は、彼の衣服を引きちぎり、手足をもぎ、腹を裂いて内蔵を取り出した。
「た、助けて、見捨てないでくれええええ！」
絶叫を上げる男子生徒は、みるみる無残な姿へと変わっていく。
やがて、首から上だけになった彼は、最後に虚ろな瞳で一言だけ言った。
「……か、帰りたい……」
……最後に、彼の頭は手に握り潰され、その命は終わりを告げた。
一部始終を呆然と見ていた二人は、声を上げる事も、逃げ出す事も出来なかった。
「一体……どうなってんだ？」
やっとの事で声を絞り出した種田の問に答えはなかった。ただ一つわかった事は、学校の敷地内からは出られないという事だけだ。先程の自分も、捕まっていれば同じ運命を辿っていたのだ。
「校舎内へ戻ろう」
種田は脱出を諦め、校舎に戻る決心をした。
「……」
あまりのショックに動けなかった文彦も、やっとの事で歩きだす。
二人は遅刻坂を上った所で、奇妙な出立ちをした犬を見た。
「ウウウウウ！」
唸り声を上げる犬は、とう見ても普通ではなかった。
「走れ、文彦！」
「う、うん！」
ゾンビ犬の横を走り抜け、二人は職員玄関に向かって走った。
「ハッハッハ、グアウッ！」
ゾンビ犬が飛びかかる。
「ああっ！」
後ろを走っていた文彦の足に、ゾンビ犬が噛み付いた。
「くっ、この！」
「ギャイン」
種田はゾンビ犬に蹴りを食らわし、文彦を玄関から引きずり入れた。