ミッドナイト・スクール
……結局その後、携帯から外への連絡は取れなくなった。
「これからどうする?」
誰に聞いても困る質問だった。
「なあ信二、生徒会室でお前の話してくれた実話があったろ。あれをもう一度詳しく話してくれないか」
和哉が言っているのは、例の殺人事件の話だ。
「そうね。さっきの死んだはずの悠子の言葉を覚えてる? 『三十年前の時と同じように』って言ってたわ。この異常な現象は、その話の事件と、どこか関係しているとしか思えないわ」
ぐったりとしている魅奈を支えたまま、ユリが言う。
「ああ……わかった」
記憶を頼りに信二は話し始めた。
「三十年前、十数人の生徒たちがここで死んだ。今の俺たちと同じように、逃げる事も出来ずに一人残らず死んだ。なかには自殺した者もいた。しかし多くの死因は何者かによる殺人だったという事だ」
「それで……その犯人の正体は?」
ユリが先を促す。
「前に言ったとおり、犯人は見つからなかった。警察の調べでは、外部から何者かが侵入した形跡は無なかったそうだ……ま、他の生徒たちも残っていたんだし、外部からの侵入があったって、形跡が残るかどうかなんてわかったもんじゃないけどね。ただ、特に学校内から何かが盗まれたりはしなかったという事なんだ。もし外部の人聞が犯人なら、こいつは目的のない無差別殺人をおこなった事になる。警察もさすがにそれは無いと考えて、事件は生徒どうしの怨恨、犯人は首吊りで死んでいた生徒ではないか。という事で片付けられたんだ。でもね……」
「な、何ですか? でも?」
泣き顔の魅奈が、ユリの肩越しに顔を覗かせる。
「……学校内の一室が妙だったらしい。その部屋は暗幕がかけられてあって、部屋は暗く、机の無い部屋の床に大きな魔法陣らしき絵柄、そして、よくわからないけれど、魔術や呪いなんかに使われる道具や供え物なんかも置いてあったとか」
「それで、その事については警察は本気にしなかったと?」
冴子は結論を急ぐ。
< 88 / 139 >

この作品をシェア

pagetop