ミッドナイト・スクール
「ああ、警察は生徒たちの興味本意の遊びだろうってさ。そういうオカルト狂の生徒の犯行かも知れないって事で、特に気にも止めなかったそうだよ」
「まさか魔法陣から悪魔でも呼び出した……なんて、誰も考えなかっただろうな」
和哉の言葉に誰も笑わなかった。
「俺たちは今、ここで悪魔と戦っているんだ。昔の事件もきっと、今と同じだったに違いない。現代の科学じゃ証明出来ない、何かがここで起こっているんだ」
普段なら笑い話にもならない考えだが、そうとでも考えなくては、この現実の説明が出来ない。
「つまり、この校舎内を徘徊する悪魔たちは、魔法陣で魔界から呼び出された存在ってことだな」
 和哉の発言に、信二は曖昧にだが頷いた。
「誰かがこの校舎内であの悪魔を黒魔術で呼び出した……あるいは昔の事件の再発かも知れない」
「再発?」
首を傾げる冴子。
「なるほど。三十年前の事件の後は何も起こらなかったんでしょ? という事は、その悪魔は魔界へ帰った……いえ、帰されたんだと思うわ」
 ユリが確信したような顔つきになった。
「なる程。つまり、今回は誰かが魔術を使ってあの怪物を召喚した。もしくは前に封印した時、封印が十分でなく、復活したって訳か」
和哉の言葉にユリが領く。
「よし、決めつけるのは早いが、とにかくその線で調べて見よう。怪しい部屋がないかどうかという事と、脱出できる手段を探すんだ」
後藤が言い終えたのとほぼ同時に、魅奈が叫んだ。
「待って下さい! 何か、何かがこっちに来る!」
全員が振り向くと、何かが体育館入口の付近からこちらへとやって来るのが見えた。
……ズスズ、スズズ。
肩を右へ左へと操り人形の様にくねらせ、足を引きずりながらゆっくりと近づいて来る。
「まずい、見つかっちまったか」
「いえ、そうではないみたいよ」
暗がりで見えなかったソレは、ようやくステージの明かりが届く位置へとやって来た。
……ズズズ、ズズズ。
「お、お前は……」
「嘘でしょ!」
……ライトに映し出されたのは種田だった……が、既に死んでいるのが一目でわかる程の変わりようだった。
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