好きだからこそ

「………朽美…それは本心か?」



「もちろん。母を殺した人間を許さない。私は… 人間を殺すっ!」



「っ!…朽美!!」



「何を言っても無駄。私の憎しみはもう、おさまらないよ」



「お前の母さんを殺したヤツはもう死んだっ!!
他の奴関係ないだろ!?」



「バカね。人間なんてどの人も同じ顔。
どいつも……私の母を殺したアイツに見える」



「!!…………俺もか?」



「……え…?」



光希の顔が切なくなった

悔しそうな、悲しそうな


嫌、そんな顔をしないで そんな切ない声を出さないで……。


私まで、切なくなる…。



「俺もソイツに見えるのか?」



「見える」



頑張って、私。
今泣いたら…今負けたら……こんな下手くそな演技でも水の泡になってしまう。

彼が、光希を助けるためには……コレしかないの


光希が私を想ってしまってはダメなの。



それだけは…絶対に…




「良く見ろよ。本当にそう見えるのか?」



「見える…よ…」



ダメ…。
近づかないで。



「朽美、俺の顔を見て言え」



ダメ…。
見れないよ。



「朽美…。」



ダメ……。
名前を、呼ばないで…。


「くち……」



「見えるって言ってるでしょっ!!!!!」



カチャッ!!



とっさに銃を構えた。
そこらへんに落ちていた銃……。

私は刀を使うから、銃なんて使わない。


でも、本当にとっさだったから……思わず構えていた…。



「どいつも、こいつも同じぃっ!!!光希もアイツに見える!!………見える…の…」



「………朽美…」



視界が悪くなった。
コレは何?

ボヤけるし、瞼が熱い…何だが…懐かしい



「泣いてちゃ、説得力ねぇよ」



「えっ……」



自分の顔に触れ、泣いている事にやっと気づいた


ウソ………
泣いちゃ、ダメなのに…



「銃、捨てろよ。お前は銃じゃなくて剣だろ?
銃は俺がお得意の武器だ」



どうして、貴方はそんな顔で笑うの?

どうして、笑っていられるの?



「……私だって、銃ぐらい使える。貴方をコレで殺せる……」



「……じゃあ、撃てよ」



「!!??」



光希は両手を広げると、フッと笑った。

いつもの無邪気で優しい笑みで……


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