ゆずいろ
ちょうど降り出した雨。
涼は私の手を掴んだ。
「……ラッキ。」
「え?」
私は涼の顔を見る。でも涼は拒むように手を掴んで走り出した。
「嘘だし。」
どこか古ぼけた民家の屋根が突き出たような所に、びしょびしょになった私と涼は雨宿りした。
「……浴衣、似合うなっ。」
雨に濡れた私に、タオルを渡しながら言う涼。
涼はにかっと笑った。
「大丈夫かっ。無理すんなや。」
タオルからは匂いがした。決して臭くはない、、、清楚で純粋な。
私は涙がこぼれた。