ランク国物語
 「『光』を昔受け継いだ者が、記憶を消す事が出来たんだ。」
 「そんな…。」
 「それが出来た者は二人。一人は何代か前の男。もう一人はタガールだ。俺が言うのもどうかと思うんだが…あいつは天才だよ。そして過去最強だと言ってもいいだろう。ゆえに馬鹿な事を考える。」
 「どういうことですか?」
 「もういいだろ。タガールは、過去の精算に行っているよ。『無』については聞いているよな。」スターツは黙ったまま頷いた。
 「今は無い研究資料によると、レイジリアンは目に見えない力で護られていたらしい。我々の六つの力に無い力、つまり『無』に関係しているのではないか…と考えついた。レイジリアンが怪我したのは二回だけ、『光』と『闇』の力の暴走した時だけ。レイジリアンに通用するのは、この二つだけと言うことだ。」
 「では何故ラック様は一緒に行かなかったのですか?」
 「タガールは暴走するかもしれない力と知りつつ使う道を行き、私は暴走する力の恐ろしさに負け、自分の力を封印する道を選んだ。」スターツは黙ったまま見つめていた。
 「別に臆病者と罵ってくれても構わない。あの時の恐怖心は消せるものでもない。皆は暴走した後しか見ていないから、平気な顔でいられるんだ。」
 「どれほどの威力だったのですか?」
 「…この国が消えるのは当然として、ラント国全土も消えるだろう。」
 「この大陸の三分の一が失くなると言うのか?!」
 「それだけで済めば良い方だろう。」
 「それだけの威力をどうやれば抑えられるんだよ!」
 「力が逃げないように、自分を中心とし、圧縮して『土』と『水』を合わせた壁を創り被害を内側だけで抑え切ったんだよ。そして、一週間で日常生活を送れるようになり、二週間で激しい戦闘にも耐えれるほど回復したのさ。勝てるわけないだろ?そんな化け物に…。」
 「ラック様は…力の暴走が怖いのではなく、『無』に立ち向かうのが怖いのではないでしょうか?」
 「何が言いたい?」
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