歌織物~百人一首をお題にした詩集
冬の早梅編

花の色は うつりにけりな いたづらに

 
 わが身世にふる ながめせしまに
   
      小野小町(9番)





長い雨のあとだった



ピンクの河は舞い落ちた花びらの重みでよどみ



満員電車もみんなの情念で、よどんでいる






咲いていたものに目を奪われ



はなやいだものに美しさを感じる



そんな時代はとうに過ぎ去って



はかなさゆえの、一瞬の美しさを、理解する






積もるものは



醜態



どろどろとした養分を吸って



大地に立つ



この二本の足で



ふんばって






また雨がふったとしても



わたしにはもう、散らす花びらもない



涙のあとには



散らすものさえ残らなかった



















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