渇望
母の決意とは裏腹に、高岡は離婚を拒んでいた。


祥子はひとりぼっちになることを恐れるようになり、けどどうすることも出来ない。


利息だけでも膨れ上がっていく借金。


次第に家には漫画のように借金取りが来るようになり、息を殺して生活するようになった。


高岡が憎かった。


けれど、両親が離婚すれば祥子とも離れなければならなくなる。


母は増やした仕事の所為で疲労を滲ませ、おまけに金勘定ばかりして神経をすり減らしていた。


帰って来もしない高岡と、そして連日のように押し掛けてくる取り立て屋。







周りの友達だけ高校生になってしまった、春。


それは家のアパートに臨む公園で、桜が満開になった日のことだった。



「瑠衣、ごめんね。
あなたに苦労させたくなくて、お母さん頑張ってきたのに。」


母が初めて目の前で、大粒の涙を零して謝罪した。


祥子はまだ学校で、だからとうとう母子ふたりで逃げることを決めてしまったのだと思った。


けれど、違ったのだ。



「ねぇ、一緒に死にましょう?」


血走った目と、向けられた刃物。


滑らかな銀色が夕焼け色に照らされ、震えながらこちらに向けられている。


驚いて立ち尽くしていると、母によって抱き締められた。


本当に久しい彼女のぬくもりだったはずなのに、体中から力が抜けていく。



「お母さんもすぐに逝くから。」

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