渇望
テーブルを囲み、詩音さんとジロー、そしてあたしと真綾が座る。


いつもは毎日見飽きていたと思っていたけれど、何だか本当に久々に顔を合わせた気がして、それぞれに俯いた。



「とりあえず、来てくれてありがとう。」


ジローがまずは、沈黙を破る。



「最初に言っとくけど、香織の名前はここではもう禁句だから、それだけは念頭に置いておいてほしい。」


彼女は大学はクビになったが、親が弁護士をつけたらしいから、今回は拘留延長されたけど、まぁ、執行猶予で終わると思う。


流星は、実は初犯ではなかったらしく、ギリギリでどうなるかわからないらしい。


それだけが今、あたしが彼らについて知っていること。



「それより、いつから再開するん?」


前のめりに、真綾は本題をつき付けた。


詩音さんとジローは一度顔を見合わせ、どちらからともなく口を開く。



「週明けの月曜よ。」


「もうその前に、何人かとは連絡取れなくなってるけどな。」


文字通り、この船は傾きかけていた。


目前のふたりもさすがに疲弊している様子が見て取れ、深刻さばかりが浮き彫りになる。



「うちはここで働き続ける覚悟、あるで。」


きっと真綾のことは、辞めさせてあげたいのだと思う。


けれど強制出来なくて、何より人が足りないからこそ、ふたりの迷っているような瞳が揺れる。



「百合ちゃんは、どうしたい?」

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