渇望
あの街では、誰かと自分を比べるほどに、惨めな気持ちばかりにさせられる。


羨んで、勝とうとして、でも一握りになれなかった人たちはみな、そうやって自滅していくのだ。


香織だけじゃない。


けれどみな、懸命だったことにも違いはない。



「あーぁ、ホストなんかにハマるもんじゃないよね。」


精一杯で強がるように、彼女は言う。



「けど、本気だったのにな。」


物悲しいばかりの呟きだった。


香織は誰かを支えにすることでしか生きられなくて、その存在に依存していた。


だからきっと、共倒れになってしまったんだ。


あたしと瑠衣も、多分似たようなものなのだろうけど。



「あたしさ、全部が終わったら、実家に戻ることになってんの。」


「…うん。」


「でもさ、あの馬鹿男のこと、待っててあげたいの。」


笑っても良いよ、と香織は言った。



「きっと周りは一緒にいることを許してくれないかもしれないけどね、それでもアイツが出てきた時に独りぼっちなんて、何か可哀想じゃん?」


笑い話のように言う彼女の言葉を聞きながら、あたしの心は軋んでいた。


それを人は、愛と呼ぶのだろうか。


今までで一番穏やかだった香織の笑顔を、あたしは直視出来ないままだ。


傍から見れば、馬鹿なだけの女なのかもしれない。


けれどそれが、彼女が全てを失った果てに出した答えなのだろう。


あたしと瑠衣は、一体何なのか。


もうずっと、そればかりが頭の中を巡っている。

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