渇望
そんな言葉で、結局足が向いたのは居酒屋だった。


あたし達は先ほどの話に触れるでもなく、適当なメニューを注文し、乾杯した。



「そういやふたりで飯って初めてだよな。」


瑠衣は思い出したように言った。


この人との生活に馴染むのも早いものだな、と思う。


ふと、アキトのことを思ったが、でも言葉にはしなかった。



「今日、楽しかった。」


取り留めて何かをしたということもないが、でもそれは本心だった。


だからありがとう、と言うと、彼は伏し目がちに口元を緩めて見せる。


窓の外はすでに陽も落ちていて、薄暗くも分厚い雲が掛かっている。


雨が降りそうだと思った。



「たまには良いのかもな、こんなのも。」


同じ煙草を吸い、同じものを呑み、席を同じくして、食事を取る。


そんな些細なことさえ、嬉しく思えたのかもしれない。


生まれ育ったあの街では、居場所なんか見つけることさえ叶わなかったのだから。



「ねぇ、携帯鳴ってるよ。」


放っとけば良いよ、と瑠衣は言う。


彼の携帯は、いつも昼夜を問わず鳴っていた。


どうせ相手なんてろくなもんじゃないだろう、と思うが、でも聞くことはない。


降り始めた雨は窓ガラスを濡らし、外を歩く人々はみな、足早に通り過ぎている。


あたしが向かう先は、一体どこだろう。

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