連続短編ブログ型小説 『一人暮らしの女』
ある意味 不慮の事故だった。 私は帰省しており、父と弟とテレビを見ていた。突然 弟は 「ねえちゃん、タバコ一本ちょうだい。」 と言ってきた。私は聞こえなかったことにしてテレビを見ながらアハハハハハハハと笑っていた。空気になりたい。 しかしさらに弟は 「ねぇ、ねえちゃん。タバコ一本ちょうだいよぉ。たまにメンソールも吸ってみたいっちゃんね~(方言)。」 と言ってきた。 黙れ。しゃべるな。今、 「間違えました」 と言ったら許してあげるから。一言、間違えたと言え。まだ間に合う。苦しいけど・・・。そもそも空気を読め。 私は固まったままテレビから視線を変えることができなかった。 母にタバコを吸っている、と告白したその日から、隠せ隠せと刷り込み教育を受け、隠れキリシタンのように自分の喫煙を隠し続けた。それが 弟のうっかり によりあっさりとバラされ、私は きょとん となった。 弟からしてみれば 「ねえちゃんタバコちょうだい」 と言えばいつも 「はい。どうぞ。」と くれていた姉がこの日ばかりは心なしかワナワナとしているように見える。俺が何かしましたか。 「え?吸ってたっけ?いつから?」 と父親は私に聞いてきた。 「え。うん。最近ね。ちょっとだけね。でももう吸わないよ。やめよっかな~。合わないし。なんか意味わかんないし。」 と、意味わかんない言い訳をした。 「え?やめんの?なんで?」と、ヤツはまだなんか言っている。 「っていうか俺なんかやばいこと言った?」 ・・・遅いよ気付くのが。 (父)「吸ったとこ見たことないからわかんなかったよ~。」 (私)「うん。だから、そんなもんなんだって。どっちでもいいんだって。もうやめたよ。」 そして口約通り、やめた。