まほろば【古代編】
適当に返答しつつ、私の持てる限りの力を総動員してこの気配の元を探っていた。

そのために自然とかなりの早足になっている。

確かにどこからか感じる気配は、山を登るにつれて強くなっていっているように感じられた。

それと同時に、山全体の空気が澄んできているのがわかった。

それは単に、自然が豊富だからという理由だけではなさそうだった。

「あっ、もうすぐ休憩地点だよ、遙。やーっと休めるよ」

安堵に満ちた友人のその声も遠くに聞こえるほど、私の鼓動は割れんばかりの大音響を奏でていた。

もうすぐだ。

もうすぐあの気配の元に行ける。

だけど……。

感じている気配のところに早く行きたいと思う自分と、そこに行くと何かが変わってしまうのではないかと恐れている自分との間で揺れ動いていた。

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