晴天
「あ…イヤだったら良いよ?俺も、また緒国さんって呼ぶから」
さんって…サエは、シュウと楽しそうに話して、こっちを向こうともしてくれない。
「…分かりました。ユウヤって…呼びます。」
なぜ自分で敬語を使っているか、なぜこんなにかしこまっているのか…。同級生に敬語を使ったのは、初めてだった。
ユウヤはちょっとミサを見つめてきた。ミサは今日始めてユウヤの顔を見た気がする。
澄んだ瞳に、綺麗に通った鼻筋。ちょっと茶色に染まった髪の毛が、いかにもサラサラそうでチョット悔しい。
「美紗は、好きな人とかいないの?」
「え?私…いない…かな?」
ちょっとほほ笑んで、ユウヤは笑顔でミサを見下ろして、軽くつぶやいた。
「どっちだよ」
「えっと…いません」
また、ほほ笑んで、今度は教室の天井を見上げて、ミサに言った。
「可愛いな。美紗は、恋愛した事無いんだ」
「ありますよ…。小学校の頃に」
「そんなの、恋愛って言わねぇよ」
「じゃあ…どんなのが恋愛なんですか?」
あまりにバカにされた気分になって、ミサはちょっと大きな声でユウヤに問いかけた。
「恋愛って言うのは、恋とか愛が、分かる時期になってやっと恋をしたときに言うもんなんだよ?」
幼い子をあやすような言い方をしていた。でも、ミサはその話し方にどこか吸い込まれるような気持ちを感じていた。
「私、そんなに子供じゃないもん。もう、高校生だもん。」
「まだ子供じゃん。シュウ?ごめん。美紗が話したいってよ~」
そんなこと言ってないし。だいたい、シュウとか言う人と、今まで話したことも無いのに、どうやって話せって言うのよ…。
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