%短編:侵された体%
驚いて顔を上げると、目が合ったとたん、すぐそらされた。
先輩の顔、ちょっと赤い。
えぇ!ウソッ!
これって、これってもしかして。
あたし、ちょっとだけ、うぬぼれてもいいのかな。
「せ、せんぱい。あの、もしかして…」
あたしが精一杯の勇気を振り絞って出した声は、
ガラッと開いた扉の音にかき消された。
「あ、よかった。気がついたのね。
今、お母さんがお迎えに来るって」
若い保健の先生が、にっこりと笑ってくれる。
「あ、ありがとうございます」
「あ、じゃあ、俺は行くわ。気をつけてな」
あ、先輩、待って!
さっきの意味深な発言の真意は?
って、そんなこと、口にできるわけない。
あ~、先生。
なんでいいとこで邪魔するのよぉ。
あたしは心の中で先生を責めた。
まぁ、先生だって仕事なわけで、本当はありがたいって思うべきなんだけどさ。