Escape ~殺人犯と私~
私が拉致されたと通報してこの家に警察が来たならば、心臓の悪いお婆さんを驚かせてしまう。



だから警察に通報しなくて済むように、少年の学校や親に話すと脅せば

私が逃げても追って来れないはず。



私はクロゼットの中にある私のカバンの中から、ペンとメモ用紙を出して

寝間着の胸元の合わせに閉まった。



後は逃げる機会を伺って、メモに脅しの言葉を書いて

少年の目に留まる位置に置いて退散するだけ。



少年から自由になれるチャンスを掴み、私の涙は自然に止まった。



後は寝間着から制服に着替えれば、私はいつでも逃げる事が出来る。



少年の生徒手帳を元に戻して、服に触れる前のように整えると

部屋の扉の鍵を開けた。


静かに部屋を出ると、脱衣場内の洗面所で顔を洗った。



昨日制服を持ったままお風呂を上がった後、発作を起こしたお婆さんに付き添って

私はリビングに向かって、制服をソファーに置いた。



今朝、私が眠っていたソファーに制服が置いてあったか……確認する余裕は無かった。



もしかしたら、制服も隠されたかも知れない。



私は濡らした顔をタオルで拭くと、タオルを洗濯機に
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