Escape ~殺人犯と私~
私はとっさに、首を横に振って否定してしまった。



だからって、このまま少年のもとで暮らすなんて、以ての外だ。




「なら、俺がそいつを殺そうか?」




少年が正気でないからこそ、本気に聞こえる残酷な言葉を放ち

私は驚いて少年に視線を向けた。



怖いほど整った少年の顔から、身の毛がよだつ程の冷淡さを感じ取った私は


ただ黙り込んだ。



彼に直視されると


刃物を突きつけられたようだった。




逃がさないとか言ったり

私が彼氏の所に帰らないと、彼氏を殺すとか言ったり


どうしたらいいのか、もう分からなくなっていた。



まるで機械がショートしたように茫然としたまま

視点が定まらない私の両目から涙が溢れて


制服のスカートにポタリと落ちた。

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