Escape ~殺人犯と私~
った。



見つけた。



気持ちが焦り、私の心拍数も更に上がった。



緊張で冷たくなった指先を、そっと内ポケットに忍ばせる。


その時



「………。」



少年の寝息が止まり、私は硬直した。



結局学らんの胸ポケットに鍵は無くて

私はそそくさと手を引いた。



少年が目覚めはしないか

私は不安な面もちで一歩後ろに下がる。


寝息は少し静かになったものの

少年はまだ起きてない。



学らんに入ってないのに、鍵の感触があるのは


学らんの内側。



ワイシャツのポケットの中に有るからだった。
私は少年の寝顔を見ながら


冷え切った両手を握り締めた。



少年の襟元に手を伸ばすと

学らんのチャックに手をかける。



そして、静かにチャックを下げるけど

意外にも、少年は起きる気配を見せない。



いける。



学らんのチャックを降ろしきると

ワイシャツの胸ポケットに手を差し込む。



男女逆だったら痴漢行為になる。



でも、そんな事を考えてる余裕なんて全く無かった。




ワイシャツのポケットに手を触れた時



突然



少年が目を開いた。

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