Escape ~殺人犯と私~
けど、少年が起きた様子はない。



私は心拍数の上がっていく胸を握り締めて

少年の座るソファーに回り込む。




テーブルの上を見たけど、私のケータイが乗ってるだけだ。


少年が着てる学らんのポケットに入ってる可能性が高い。



ソファーに座り、静かに寝息を立てている少年を目前に

私は息をのんだ。



もし、少年に何かされそうになったら

いざとなったお婆さんを呼べばいい。



心臓の悪いお婆さんを驚かせないように……。



私は静かに深呼吸をして気持ちを落ち着かせ

ソファーの少年に一歩近付く。



寝てる姿まで綺麗だから

本当は起きてるんじゃないかと錯覚させられる。



光が無く、薄暗い闇の中

私は怪我をしてない右手をそっと、少年の胸ポケットに伸ばす。



心なしか冷たく感じる学らんに触れると

目を覚ます気配のない少年のポケットに指先を忍ばす。



学生手帳が入ってるせいで、指先が奥まで届かない。



かつて無いスリルに手が震える。



そっと手帳を取り出すと

胸ポケットの上から触れてみた。



ツイてるらしい。

明らかに南京鍵の鍵らしい感触がわか
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