オチビな理由


「ちょっ…!待てって!オチビ!!」

「さわんないでください!何にも話すことなんかない…!」

「俺は話すことがあるって言っ…待てよ!聞けってっ!」


 次の日、授業も身に入らないまま部活へ行く途中、孝太先輩にばったり出くわしてしまった。
 「げっ」と言わんばかりの表情で、そのまま回れ右をして反射的に走り出してしまったけど、結局捕まってしまった。
 先輩に二の腕を強くつかまれる。
 無人の廊下で背中を壁に押し付けられて、その冷たさに体が震えた。


「…やっぱわっかんねぇよ。何で嫌なのか。お前、そんなにオチビって言われるのが嫌か?」

「…!し、信じらんないっ!先輩ってバッカじゃない!?」

「な!何でそうなるんだよっ」


 もうとにかく腹が立った。
 はじまりは同じだったはずなのに、どうして男の子はあたしを置いていこうとするんだろう。
 あたしだって先輩と肩を並べていたい。バレーでも日常でも、つまりは全部。
 でも、ちっぽけなあたしには振り切ることもできない、たくましい腕。
 まただ、またあたしは思い知らされる。先輩との差を。



 もうヤダ!ずっとこの人のこと気になってしょうがなかっただなんて…恥ずかしくてバカみたいだ。



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