オチビな理由


「せ、先輩がただ遠まわしに言ってただけで、言ってたことにかわりは…」

「だーかーらっ、それがわっかんないって言ってんだろ。オチビもいきなり怒り出すわ泣き出すわ…泣きたいのはこっちじゃんか」


 すねたようにそっぽを向いて頭をかく先輩を、今度はあたしが目を見開いて見つめた。
 壁に押し付けられていた肩を拘束する先輩の手がゆるめられる。
 しばしの沈黙の後、我慢しきれずにこぼれおちた涙を、先輩が払いのけるように拭ってくれた。


「…なーんか話聞いてると、俺がオチビを嫌ってるからそう呼んでるって。何でそうなるわけ?オチビっていう言い方は見下すための言葉じゃねーし」

「…あたしは……そうだと思ってたから。だから」

「違うっつーの!むしろかわいいって意味でオチビって呼んでるのに」

「……は?」

「あ、ヤベ…っ」


 先輩はあわてて自分の口元を押さえた。
 それからあきらめたようなため息をついて、まっすぐあたしを見た。

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