治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん


「シブリールさんって、自分は優しいくせに。他人から優しさを貰うのは不慣れですよね」


思ったことを口にして、目を瞑る。


優しさ不慣れだと思ったのは、いちいち敏感すぎるから。他人から貰う優しさについて。


不慣れじゃなきゃ、そもそも、どうして優しいんだ。という言葉は出ない。


私としてはこれぐらいのことは当たり前。


人を助けるのと同じぐらい当たり前で、疑問になんか感じない。




――生きている限り、人は人を助けなきゃいけない生き物なのだから。




「……っ」


寒くて鳥肌がたってきた。焚き火がないのが痛かったか、でも疲れているからすぐに寝れるだろうと考えて。




「不慣れだよ。君の優しさしか、俺は知らないのだから」




毛布がもう一枚、私の体にかけられた。


「それにね、この広い世界で優しい奴なんか……俺は君しか分からないよ」


毛布に入る体が一つ増える。


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