治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
アリスが私たちの一歩前に出て、こちらに振り向いた。
みてみて、とはしゃいでいるように笑っていた。
何かがこれから起こるのか、微かな緊張が積もる。
「力、抜いて」
「で、でも、なんか……水に立つこれも」
「身構えなくていい。痛いことなど一つもないから。アリスが今からやることを説明すれば、ただ家に帰るだけだ。
ここは“帰り道”。ババアのもとまで帰るまでの通過点だ。ああ、別の場所に繋がっているんだと言えば分かりやすいかな」
「繋がるって、どこに」
「どこ、か……。どこだろうね。目的地はババアの城と分かっているが、場所――つまりはどこにあるかは知らないだ。
俺も帰る時はああして帰るからね。道はババアが作り、俺たちはそこを通るだけ」