治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
ああしての部分でアリスを顎でさす彼。
見れば、アリスは首につけてあったネックレス――今初めてみたけど、指輪をチェーンで通したような首飾りだった。
首から外し、月の上におく。
沈みはしない。波紋が広がり、私の足に当たった。
通り過ぎた波紋は目で追わない。
緊張しないでとかそんなことを言われても、体の中はガチガチだ。
【ラグナ様、ただいま。アリスが帰ります】
水面の月を見ながら、アリスの旋律が響く。
魔術の詠唱は普通に喋るのと違う。
印象というか、音色というか、声の響き方とか。
耳に入ると鼓膜が揺れそうで、体全体によく浸透する。
ヴィオリンの演奏を聞くよう、人の声じゃないような音を持つ旋律がアリスの口からもれる。