神への挑戦

二人組の女の方は、倉庫内を物色している男の方に、質問をぶつけていた。

「詳しくは知らないな。でも、ただの麻薬組織とは訳が違うのは知っている…どうやらこの組織は、日本でテロを起こそうとしているらしい」

「えっ？テロ？？そんな事考えている人間が、戦争放棄しているこの法治国家の日本で居るの？」

「それは、探せばいくらでも居るだろう。何かしらの目的があって、やろうとしているんじゃないか…『睡蓮会』宛てに、脅迫文も届いたらしいしな」

（随分と興味深い話を聞かせてくれるじゃないの）

エースは、内心喜びながら、この話を聞いていた。この事件に睡蓮会が関わっている事や、テロという新事実も耳にする事が出来た…。

どうやら、エースの中の仮説が現実身を帯びてきた結果になっている。

「…信じられない。そいつ等バカなの？こんなに足跡を残しといて、睡蓮会相手にケンカを売るなんて、正気とは思えないわ。確実に組織のメンバー、全員殺されるわよ…」

「…可能性としてはあるな。睡蓮会は、それだけの力がある組織だ。深入りし過ぎると、最悪そうなる…まぁ、それを承知で踏み込んできているんだろうさ。でも、そいつ等がどうなろうが、俺達には関係ない。俺達は、命令通り仕事をこなすだけだ…そうだろサギリ？」

「うん…でも、本当はこんな事したくないけどね」

「したくてこんな事やってる奴なんか居るかよ…」

二人は、倉庫内を一通り調べ済ませると、自分たちの痕跡を消し、倉庫から姿を消した。

その姿を確認したエースは、器用に下に降りると、服に着いた汚れを払い落した。

「何やら物騒な話をしていたな。テロねぇ……思想犯は俺の専門外なんだよな」

エースは一言そう漏らすと、ため息を吐いた…。