神への挑戦
答えないと言うよりは、何も聞いていないと表現した方が、適当だと言える表情をしている。ボケっとすりガラス越しのイスに座り、無表情でこちらの様子を窺っているだけ…。

銀次は目の前の青年の表情を注意深く観察しながら、再度同じ質問をぶつけた。

「もう一度聞く、お前の通っていた高校に、シンジって名前の生徒が居た筈だ。俺らの調べで、お前がシンジと内通している事は察しがついている。俺が聞きたいのは、シンジの居場所と、お前がどういった経緯でこの事件に関わったのかの二つだけだ……何か答えてくれないか?」

銀次は先ほどと同じ質問を青年にぶつけてみたものの、反応は先ほどと同じく、無反応だ。ボケっとイスに座り、ただ時を待っているのみ…。

この青年の様子を見て銀次は、先ほどの担当刑事の話を思い出した。

「掴まった二人が何も答えない?2人共か?」

青年に案内される前に、銀次が昔お世話になった刑事と会った時の話だ。

「あぁ。他の奴等は大方調べ終わったんだが、あの二人に限り、黙秘を貫いている。俺らの質問に答える気配は全くなし…一応、麻薬の検査とかはしたんだがこれも陰性。俺としても困っているんだわ…」

年季の入ったスーツを着込んだ刑事は、頭をかきながら、喫煙パイポを加え、少し疲れた様子で銀次に話しかけた。

「らしくねぇなおやっさんっ。昔の俺の時みたいに、一発ド突いて、唾撒き散らしながら胸倉掴んで怒鳴ってやれば、大抵のガキはすぐ薄情するだろうが…歳か?」

「誰がおやっさんだっ!お前みたいな息子を持った覚えはねぇ。しかもそれは昔だから出来た事だ…今そんな事やったら、減給になっちまうっつうんだよ。まぁ、怒鳴り散らすまでは俺もやったんだが、ビビる様子も一切なしだ…俺も、お前みたいな奴だったら思う存分に仕事が出来るんだが、あいつ等みたいなタイプは、訳がわからん。まだお前の方が可愛かったぜ」
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