神への挑戦
エースの運転する車は駐車場に入り、適当に車を止めた。そしてエースが電話連絡をすると、入口に若い女性が姿を現したのだ。

綺麗なスーツに身を包み、下品ではない程度に光沢を放っているヒールを履いた、３０代の女性である。エースとジャックの姿を確認した女性は、軽く会釈をすると、ホテルの中に案内しだした。

ホテル内は、綺麗に切削された大理石が綺麗な色彩を彩っており、汚れ一つない綺麗な内装だ。従業員も一糸乱れぬ態度でお辞儀をし、礼をされた本人が戸惑ってしまうぐらい、徹底された接客態度であった…。

女性は入口の近くにあるカフェテラスに案内すると、自己紹介を始めた。

「身分は明かせませんが、私は小宮さんの代理で来た坂井と申します」

「事情は察してますんで気にしなくて良いですよ。俺はエースです、こっちは相棒のジャックって言います」

「ジャックです…どうぞよろしく」

ジャックは外見が白人なので、正しい名前なのだが、エースはどう見ても日本人だ。明らかに偽名なのだが、ジャックは何も突っ込む事なく、平然としている。

どうやらエースは仕事でも普段から自分の名前をエースだと自己紹介しているようだ。

坂井さんはそんなエースを見て、手を口に押さえながら上品に笑いだした。

「小宮さんから話は伺っています。少ない情報で答えを導き出すエキスパートだと…」

エースはそんな坂井さんの態度に何か気付いたのか、苦笑を浮かべながら坂井さんに聞いた。

「その様子じゃ、それ以外にも何か小宮さんから聞いているんでしょ？」

エースがそう言うと、坂井さんは一つ頷くと話だした。

「えぇ…才能の持ち腐れだとか、天才肌の異端児とも言っていましたわ」

坂井さんがそう言うと、その言葉を聞いたジャックは一言…

「納得だ…」

と言った。
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