【長編】唇に噛みついて


唇が触れそうなくらい顔を近づけていると、零はそっと離れてあたしを抱きしめた。


「俺は優しいから、今日は我慢してやるよ」


そう言ってギュウッとあたしを抱きしめる。
そして優しい声が耳に届く。


「……きーちゃん好きだよ」


意地悪だと思ったら、急に優しくなったり。
ホントに零って分かんない。
でも……。
それでも……。
そんな零があたしは大好きなんだ。


「……うん。あたしも零が大好きだよ」


自己中でどSでどうしようもない変態だけど。
いつも最後はあたしを優先してくれる優しい奴。


零の背中にしがみついた瞬間。
グラッと視界が変わり、天上が見える。
気づくと、背中には柔らかいベッドの感触に、覆いかぶさるようにあたしに跨る零。


……え?


状況が分からずにキョトンとしていると、零は意地悪な笑顔であたしを見下ろしながら口を開いた。


「やっぱ今のなし。我慢できないから……いただきまーす」


「え!?ちょっ」


あたしに覆いかぶさる零。


やっぱり……。


「優しくなんかなーい!!」


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