6年目の愛してる
課長が、なんで奥さんの紗絵さんとすれ違ってしまっていたのか。
分かった気がする。
この人は、本当にどこまでも優しい。
相手のことを思いやりすぎるんだ。
きっと今すぐ奥さんの元へと飛んでいきたいはずなのに。
俺のことを気遣ってくれて、傍に居てくれている。
俺なんかのために、たくさんの言葉を贈ってくれる。
「さ、そろそろ愛しの紗絵のとこに行くかな!」
立ち上がって歩きだす課長の後姿をみつめた。
デッケェな、課長の背中は。
いつか、俺もあんなふうにカッコよく生きれるようになるかな?
「ほら、はやくしろー。あ、そうだ。今度紗絵がお前に化粧の仕方教わりたいって言ってたんだよ!だからついてこい!ついでに俺の着替えかしてやるから!」
振り向いた課長は本当にカッコよくて。
俺の人生の目標に勝手に決めた。