隣の先輩
　時折、雨が横殴りになってきて、びしょぬれとはいかないまでも、洋服や髪の毛が濡れてしまっていた。


　それは先輩も同じで、先輩の髪の毛はべったりと顔に張り付いていた。


　エレベーターを降り、廊下を歩くと、そこも雨が降り込んだのか色が変わっていた。


　滑らないように気をつけながら、家の前まで来ると、先輩にお礼を言う。


「ありがとうございました。いろいろと」


　先輩の手が私の頭に触れる。


「俺も楽しかったから」

　そう言うと、先輩の手が離れた。


　何度もされたことなのに、どきどきしてしまっていた。


　頭をさげると、玄関を開け、家の中に入ろうとした。


　でも、玄関のドアのノブが回らない。鍵がかかっているんだ。


　チャイムを鳴らしたが、どうも人がいるような気がしなかった。
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