隣の先輩
 電話でもかけようと、携帯を取り出すと、母親からメールが届いていた。そこに書かれていたのは


「三人でおでかけしてきます」というものだった。


 母親に電話をするが、マナーモードにしているのか出ない。


「もしかして家に誰もいない?」


 私は顔に張り付いた髪の毛から滴り落ちる雨粒を感じながら、うなずいていた。

「家にあがる? タオルくらいなら出せると思うけど」

「いいですよ。すぐに帰ってくると思うし」


 家にあがったら濡れちゃうから。


 そんな私の気持ちに気づいたのか先輩は苦笑いを浮かべていた。


「そんなこと気にするなよ。この前、母さんを家にあげてくれたお礼」


 そう言うと、先輩は鍵を開けていた。そして、扉をあけると中に入ってしまった。
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