隣の先輩
「迷子って高校一年なんだから。小学生じゃあるまいし」


 私の気持ちを察したのか、それとも本当にそんなことはないと思ったのか、依田先輩は苦笑いを浮かべそう言ってきてくれた。


 でも、最後の言葉が既にフォローになってなかった。

「初対面が近所で迷子になっていたようなやつだし、入学式の日は学校に行くのも迷っていたやつなんだから。

一人にしておくとどこかに迷い込みそうな気がしてさ」


 一番痛いところをつかれてしまった。かなり恥ずかしい。


「あ、えーと」


 依田先輩はそれだけを言うと、考え込んでしまった。

さっき、言った言葉を申し訳なく思っているような気がした。



「誰だって迷子になることもあるから」



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