隣の先輩
 いつも軽く話しかけてくる依田先輩にまで、優しい言葉を向けられていた。


 それは即ち、先輩があまりに同情していたことだと思う。


 微妙にへこむ。


「でも、楽しかったよ」


 そのとき、暗い空気を一掃するような明るい声が響く。

 顔をあげると、先輩が笑顔を浮かべていた。依田先輩の顔もつられたみたいに明るくなっていた。


「また来年もあるだろうから、一緒に行けば?」

「そうだな。気が向いたら」


 そう言うと先輩は歩き出す。



 依田先輩は私をちらっと見ると西原先輩の後をついていっていた。


「お前、毎年、あそこの入場券持っているな」

「毎年もらうからな。彼女でもいれば自分で使うんだけど」


 そんな言葉を二人は続けていた。


 ただの社交辞令かもしれない。
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