隣の先輩

 それでもその言葉が嬉しかった。


 教室に行くと、私の席に愛理が座っていた。近くまで行くと、彼女は持っていたキーホルダーを私に見せる。


 それは私が昨日買ったものと同じものだった。


「どうして、これ」

「昨日、咲と一緒に行ったの」


 そのとき思い出したのが依田先輩の言っていたこと。


「もしかして手をつないでいたのを見たって依田先輩に話したのは」

「私。中むつまじかったって教えておいたの」

「愛理」


 そう強い口調で言いながらも別に怒ってはなかった。


 昨日一日、子ども扱いされていたような気がするけど、そこまで嫌ではなかったからだ。


 それだけ先輩との距離が近づいたのは分かっていたからだ。
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