隣の先輩
 その言葉に顔をあげると、担任の大村先生が立っていた。彼の担当は数学だった。


「どうかしましたか?」

「森谷を見かけたら、プリントを出して帰るように言っておいてくれ」

「もう残っていないと思いますけど、見かけたら伝えておきます」

 今日、森谷君は遅刻をしていて数学のときいなかった。その後は双方忘れていたんだろう。


「そうだろうな。まあ、見かけたらでいいから」


 職員室を出ると、階段をあがる。そして、なんとなく先輩のクラスを見る。


 三年は私たちより学校が遅く終わる。


 受験でいろいろ大変なんだろう。

 二年後に自分があの中にいると思うと複雑な気持ちがするけど、考えようによっては後二年あるんだ。

 少なくともそれまではゆっくり過ごそう。
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