隣の先輩
 その声も、澄んでいて思わず耳にすっと入ってきそうな声だった。


 彼女に欠点なんてあるんだろうと思ってしまうほど、完璧な人に見えた。



「真由」


 私を呼ぶ声が聞こえ、思わず声のした方向に顔を向ける。


 そこには咲と愛理の姿がある。二人はそれぞれオレンジジュースとアップルジュースを持っていた。


「依田君の妹さんと知り合いだったのね」

「はい」

「そっか。彼女、いい子よね」


 私がその言葉にうなずくと、彼女は「じゃあね」というと、去っていく。そして、私が並んでいた自販機に並んでいた。


 私は愛理たちのところへ歩いていく。


「さっき宮脇先輩と一緒だった?」

「うん。お金を落としたら拾ってくれて」


 あの人は宮脇さんというんだ。


「あの先輩優しいからね」


 愛理の言葉にうなずく。愛理も彼女のことを知っているのだろう。


 私たちは教室に戻ることにした。


 あれが先輩の好きな人なんだろうか。



 そう思うと、彼女がすごくいい人なのに、寂しいような、切ないようなそんな気持ちを感じていた。
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