隣の先輩

 家の中に入ると、母親が話しかけてきた。



「聞いた? よかったわね」


 何が?といいたくなるほど、明るい言葉だった。


 つい飛び出してきそうになった言葉を引っ込める。


 母親はそんな私の気持ちにお構いなく話を続けてきた。


「最近、不審者が出るって話があったでしょう?」


「そういえばそんな話があったような」


「この前、話したのに。聞いていなかったのね」


 お母さんは呆れたような表情をしていた。


「それらしき人がつかまったんだって。泥棒を何件かしていたみたい」
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