隣の先輩
 だから「行きたい」とは言えなかった。


「博物館にします」


 引っ越してきて、この近くに博物館があることを知った。そのときから密かに行ってみたいと思っていた場所の一つだった。


「分かった。広いからかなり時間も潰せそうだよな。じゃ、ごはんとかはそのとき決めるってことで」


 私はうなずく。


 そのとき、玄関の開く音が聞こえた。

 すぐにリビングの扉が開き、裕樹が戻ってきた。


「もう起きたんだ。つまんね」


「つまらないって」


 また裕樹はよからぬことを考えていたんだろう。


 本当、裕樹はよく分からない。


 でも、先輩といるときの彼は年相応に見えて、

裕樹にとって先輩は一番自然体でいられるんだろうな、って感じることができた。


 もしかすると兄のような感じで先輩と接しているのかもしれない。
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