隣の先輩
「反応が子供みたいで確かに可愛いね」


 子供?


 そう言われたことに戸惑っていると、宮脇先輩の声が響く。


「お兄ちゃん。そういうことを言ったら失礼だよ」


 宮脇先輩は腰に手をあて、兄を睨む。



「失礼かな」


 その人は困ったような表情を浮べていた。悪気はなかったんだろう。



 さっきまでの落ち着いた雰囲気とは違っておろおろしているようだった。



「悠真さんは宮脇には弱いんだよ。昔からね」


 先輩はそう言うと、苦笑いを浮かべていた。


 二人は小学校から一緒だから、色んなことを知っているんだろうな。


 すごく羨ましかった。私が知ることのできない時間が二人の間に流れていたから。


 そのとき、宮脇先輩の携帯が鳴る。


 彼女は言葉を交わすと、電話を切っていた。


「用事があるから帰るね。呼び止めてごめんね」


 彼女は兄と言葉を交わし、来た道を引き返している。


 二人の姿が小さくなって、先輩が声をかける。


「帰ろうか」


 私は先輩と家に戻ることにした。


 それから毎日のようにどうやって先輩にチョコをあげるか迷っていた。


 なかなか決められない私をよそに、あっという間にその日になってしまっていた。
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