隣の先輩
第40章 恋を忘れる夜
 バレンタイン。そんな日は自分には無関係だと思い続けていた。でも、今年は特別だった。


 チョコは家においておくことにした。何かあって溶けたりしてしまうと嫌だったから。


 愛理には義理だと言えばいいと言われたが、義理なんて言うといかにも先輩のことは興味ありませんと言っているみたいでできなかった。


 そんな私が考えたのは

「バレンタインチョコでおいしそうなものを見つけたので、先輩が食べたいかなと思って買ってきました」

だった。


 そこで追求されたら「チョコレートは集中力を高めるのにもいいと言うから、受験勉強のときにでも食べてください」とか言い訳染みたことも考えていた。


 お前じゃないからとか切り返えされそうな気がするが、それはそれなので、気にすることでもない。


 すぐに家に帰り、制服のままチョコレートを持って家を出た。


 紙袋をあからさまに持っているのはなんだか気が引けて、自分のバッグの中に入れていた。


 緊張しながら、先輩の家のチャイムを鳴らす。


 インターフォンからすぐに声が聞こえる。


 和葉さんの声。


「あの、先輩に用事が会って」


「待っていてね」


 そう言うとインターフォンが途切れる。


 扉が開くと、先輩が出てきた。


 先輩は目が合うと、相変わらず笑顔でいてくれた。
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