隣の先輩
 先輩に買ったチョコレートは、跡形だけを残して口の中でゆっくりと解けていく。


 先輩のことが好きだった。何度諦めようと思っても、口の中に感触を残すチョコレートのようにその気持ちは残り続けていた。


 視線を窓の外に向ける。そこには白いものがゆっくりと舞い降りていく。


 私はそれを見て、笑みを浮かべる。


 でも、やっとこの気持ちも忘れることができそうな気がした。


 雪が解けて水になり、流れてしまってなくなるように。


 最後の一つを口に運ぶ。そして、部屋に入るときに一緒に持ってきた紅茶を飲むと、空になった箱に蓋をした。


 翌朝、起きると先輩から電話がかかってきた。


 私が風邪を引いていないか心配になったらしい。


「宮脇先輩は?」


「大丈夫だってさ」


 その先輩の言葉にほっとする。


「ま、あんな寒い中をうろついていたんだから、無理するなよ」


 私はお礼を言う。


 電話を切ろうとしたとき、先輩が思い出したように言う。
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