隣の先輩
第43章 卒業式
 冷たい風に紛れ込むように、時折あたたかい日差しが降り注ぐ。


 もう春を思わせる日差しはあたたかいはずなのに、どこか冷たい。


「真由」

 愛理の声で我に返る。そこには学校の制服を着た愛理と咲の姿があった。


 彼女たちの背後にはもうすぐ通って一年になる校舎がある。


 本当は休みのはずの卒業式の日に、私は学校に来ていた。


 卒業式に本当は来るつもりはなかった。


 先輩との約束もあるし、会いたいなら今はすぐに会えるから。


 でも、今日、先輩がこの学校を卒業してしまうこの日に学校に来ていた理由は、昨夜愛理から電話がかかってきたからだ。


「制服姿の先輩を見られるのはこれで最後だね」


 そんなことを言われたら見たくなってきてしまった。


 いくら隣の家で先輩に会えても、制服姿を見てみたいなんていえるわけもない。


 それで愛理と咲と待ち合わせをして学校に行くことになった。


 それに私にはまだ決めないといけないことがあった。


 先輩に何を買ってもらうか、だ。


 そのとき、愛理の携帯が鳴る。


 彼女は携帯の画面を見る。


「しばらくここで待っていようか」


 もう卒業式も終わって、各クラスでホームルームをしている時間だった。


 早いクラスはもう終わっているみたいで、校舎からざわついている。

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