隣の先輩
「そういえば決めた? 誕生日プレゼント」
「まだです」
あれこれ考えたけど、やっぱり決められなかった。
宮脇先輩にあの話をされてからはずっとそうかもしれない。
私がほしいのは、物じゃなくて、先輩と一緒の時間。
隣にいられる権利。
今日、宮脇先輩にいろいろ言ってもらっても、それを口に出すことはできなかった。
「そんなに高いものじゃなかったら大丈夫だから」
「はい」
ネックレスとかその辺りにしようかな。それならあまり高くないものもあるし。
買ってもらうなら身につけるものにしたいかなと思ったから。
もうすぐ春になろうとしている時期なのに、まだこの時期の風は夜になると冷たい。
まだ白い息がこぼれる。
私は手を合わせると、息を吐く。
「風邪引くから、中に入ったほうがいいよ」
そしたら先輩と話ができなくなってしまうからはいりたくない。
それを口に出せなくて、うなずいていた。
どうして日本は春が冬の次にあるんだろう。
もし、外国みたいに九月から新学期だったら、寒さを感じずに先輩と一緒に話せるのにと思わずにはいられなかった。
「あと十分だけ」
「無理するなよ」
少し困ったような先輩の声。
先輩を困らせてしまっても、それでも、今、先輩ともう少しだけ一緒にこうしていたかった。
それが臆病な私の精一杯の気持ちだった。