隣の先輩
 渡したいもの? プレゼントじゃないよね。


「はい」


 私は家の中に入る。自分の部屋に入ると、洋服を着替えた。


 本当はシャワーを浴びたかったけど、先輩を待たせておくのが嫌だったこと、

そのさっきの言葉の意味を考えると、胸が苦しくなってきてしまったこともあって、それ以上じっとしていられなかった。


 ありがとうってどういうことなんだろう。嬉しいって言ってくれたってことは少しだけでも期待していいのかな。


 さっき先輩が買ってくれたネックレスを箱から取り出した。


 先輩が似合うと言ってくれたこと、げんかつぎの意味があったんだろう。それを首にはめる。


 そして、乱れた髪の毛を簡単に整えると、先輩の家に行く。


 チャイムを鳴らすと、緊張する間もなく先輩が出てきた。


 先輩も着替えたのか、洋服が変わっていて、髪の毛が少し湿っていた。


「髪の毛、まだ濡れているよ」


 先輩は困ったような笑顔を浮べていた。先輩の手がいつものように私の前髪に少し触れる。


 そんないつもの仕草にドキドキしていた。


「乾かしてきたほうがいいですか?」


「タオルでも貸すから、あがる?」


 私はうなずいて、先輩の家に上がった。リビングの中央部分に突っ立っていた。


 見てはいけないと思いながらも辺りを見回す。一年の間に何度も入った先輩の家。

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