キョウアイ―狂愛―
自分を盗賊団に入れてくれ。街を変えたいんだ。
まっすぐな瞳はジキルに訴えた。
体格は貧相ながら、頭が切れ、ラッドの秘策で何度も危機を乗りきった。
盗賊団の要と言われるまでに成長を遂げた。
いつも真っ先にジキルにからかわれるラッドだったが、それも愛情あっての事。
「お頭……、お頭のおかげでオレは夢を見れました。
貧しくて、何も出来なかったオレ達、スラム街の人間でも、何か出来る、国を変えられるかもしれない、夢を叶えられるかもしれないって……そんな力が、……あんたにはあった」
ラッドはやはり振り返らずに思いを告げた。
「お頭、行ってください。
あんたにはまだ終わって欲しくないんです」
「…………」
子分を、これまで共にやってきたラッドをヴァンパイアの群の前に置き去りに……。
心臓をわしづかみにされたように苦しく、ジキルは言葉が出ない。
「ラッド……いやよ……!」
クレアがすがるようなか細い声をあげた。
「……一緒に」
「行け!!」
クレアの申し出はラッドの怒鳴り声にかき消された。
ジキルは僅かに顔を歪めたが何も発っさないで馬を蹴った。